ハワイ諸島の中で一番若く、そして大きな島のハワイ島では火山活動が活発化してキラウエア火山区域内にある一部の住宅街では大きな被害が出ています。メディアはこぞって映像を放映し寄付金活動も大々的に行われていますが、実は火山活動とは別のところでハワイの自然界に非常に深刻な惨事が起きていることは一般メディアではあまり大きく取り上げられていません。
ハワイの花と言えばハイビスカスやプリメリアを思い浮かぶ人は多いと思います。でもハワイの象徴となる花は「ohia(オヒア)」という木に咲く「lehua(レフア)」と呼ばれる可憐な花なのです。オヒアの木は黒く輝く溶岩に覆われた大地にシダなどと共に最初に生命の芽をあらわす植物です。火山の島であるハワイは溶岩が流れて大地を広げてきました。現在に至るトロピカルで豊かな森は、このオヒアから生まれたと言っても過言ではないようです。
オヒアの木に咲くレフアの花は、それぞれが約1万にも及ぶ小さな種が詰まった種袋になります。そして小さな小さな種たちは風によって溶岩の大地などに旅をします。ほんの少しの水で溶岩の上に芽を出したオヒアは、岩の間に根を張って自らの枯葉などで堆積物を作りながらやがてレフアの花を咲かせます。花の蜜を吸いにきた小さな鳥や実を食べに来た鳥の糞に混ざったほかの植物の種がオヒアの堆積物に育ち始めます。これがハワイの森の始まりです。
そんな森の母とも言えるオヒアが近年になって謎の病原体に汚染され、特にハワイ島のオヒアの森は絶滅し始めているのです。感染の経路が不明なため、他のハワイの島々への感染防止策として特にハワイ島からのオヒアの木やレフアの花の持ち出しはしないように呼びかけているのですが、ついにカウアイ島のオヒアにも病原菌による被害が発見されてしまいました。
ハワイにとってのオヒアの木の大切さが世界レベルであまり知られていないために、隔離が滞らなかったのが原因かもしれません。アウトドアブームで森に入る人も増えている近年、一般レベルで出来ることはあるはずです。「むやみに森から植物を持ち出さない」「森から出たらその場で靴底を綺麗にする」など、身近で簡単にできることから実践してハワイの美しい森をみんなで守りましょう。