荘厳なワイメア渓谷を作り上げたと言われるワイメア川。水流は今もなお渓谷の間を脈々と流れ、大自然の醍醐味をこれでもかと言わんばかりに魅せてくれる。全長は約19.5キロメートルにおよび、ハワイ諸島の中で最も長い川として記録されているカウアイ島を代表する川のひとつでもある。
ワイメア川は、カウアイ島の中央に位置する世界で最も高い標高地にある湿地帯「アラカイ・スワンプ(Alakai Swanp)」を水源としている。水は、約910メートルの地中を浸透したあとワイメア渓谷に清水として湧き出る。これこそがワイメア川の源流と言われている。
ワイメア(Wai-mea)とは、ハワイ語で「赤い水(Red Water)」を意味している。ワイメア渓谷の赤土をたっぷり含んだ赤茶けた水が河口へと流れてくることからワイメア川と呼ばれるようになったようだ。また、多くのハワイアンの名称に由来があるように、ワイメア川の名前にも秘められた物語がある。
マウリリ渓流の滝にまつわる物語
その昔、マノという首領がワイメアの首領の娘コーマリウを妻にしたいと願ったそうだ。しかし、マノの冷淡さを噂で聞いていたコーマリウはその求婚を断った。その後、マノは嫌がるコーマリウをワイメア渓谷の奥、ワイメア川へ流れ込む支流のひとつであるマウリリ渓流の滝裏に連れ去った。コーマリウは再三の求愛にも応じることなく、とうとうマノはコーマリウの命を奪ってしまった。コーマリウから流れ出た血は、川を永遠に赤く染め、ワイメア(赤い水)と呼ばれるようになったということだ。
ハワイアンの誇りカ・ワイ・ウラ・イリアヒ
ワイメア川は、河口近くで「ワイケア(Wai-kea)」と呼ばれる澄んだ水が流れるマカヴェヒ川(Makawehi)と合流して、キャプテン・クックが初めてハワイに上陸したワイメア湾へと流れ出る。「ワイケア(Wai-kea)」とは、ハワイ語で「白い水」を意味している。不思議なことに、ワイメア川の「赤い水」とマカヴェヒ川の「白い水」は、ワイメア川としてひとつになっても、時に左右に分かれたまま混ざり合うことなく海へと向かう。この混ざり合わない赤い水には、「カ・ワイ・ウラ・イリアヒ(ka-wai-ʻula-ʻili-ahi)」という特別な名称がある。その由来には、ハワイに西洋文化が入ってきた頃、白い水に例えられた西洋文化に対して、ハワイアンの誇りを赤い水に例えたという説がある。
先住民の生活の面影が残るワイメア川河口
タヒチから最初に海を渡りカウアイ島に上陸したクーアルヌイキニアーケア。彼が定住の地に選んだのがワイメアだった。当時、島に持ち込んだ衣食住に役立つ植物を最初に植えた地がワイメア川の河口だと伝えられている。クーアルヌイキニアーケアの息子であるクーアルヌイパウクーモクモクは、タヒチアンが上陸する以前の先住民であるメネフネと共存した。後に、クーアルヌイパウクーモクモクの息子オラは、メネフネと数々の大仕事を成したと言われている。そのひとつが「キキアオラ」通称メネフネ・ディッチと呼ばれる用水路だ。この用水路によってワイメア川河口は人々の生活に欠かせない豊かな農地となった。今でも河口から少し谷に入ると当時の生活の名残りとも言える広大なタロイモ畑が残っている。
Information
地図 | MAP |
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住所 | Waimea Rever Kauai HI |